ご存じの通り、長期にわたる利益の最大化を図るには、製品ポートフォリオを巧く管理する必要があります。では、製品ポートフォリオが、プラットフォームに根差したものだった場合はどうでしょうか。本稿では、プラットフォームのベネフィットと、ベストプラクティスを見ていきます。
本稿を読んでいただきますと、プラットフォーム化による成果を最大化する手法がお分かりいただけます。
プラットフォーム・ベースの製品管理、何が特別なのか?
まずは、プラットフォーム・ベース製品について簡単にご説明いたしましょう。複数の製品が同じプラットフォームからできた場合、設計上の原則や、技術的な解決策、部品が高いレベルで同じです。このアプローチのメリットは、スピードとシナジーが得られる点にあります。私たちモジュラーマネジメントは、この様な効果を生むには、市場要求を広くカバーする製品ポートフォリオを包含するモジュラーシステムを構築する事が最良の策だと信じています。
プラットフォーム・ベース製品 とは、単一の製品でなく、ある領域全体の製品を管理することを意味します。同時に、同じ設計、部品を用いる必要があります。ここで、面白い疑問が出てきます。
- プラットフォーム上でカニバリズムを避け、差別化をしながら、いかに売り上げを最大化できるか。
- 製品のどの仕様が他と違うかといった点を、いかにエンジニアに情報を提供すべきか。(例:製品内で何が共通化できるか。そして、それはどの様に進化するか。)
- 製品ラインナップから得られる利益をどの様に計算して、コントロールして、最適化するのか。
上記3質問について、次項で回答いたします。
プラットフォーム製品のポートフォリオ管理を成功させるための重要な要素
“プラットフォーム上でカニバリズムを避け、差別化をしながら、いかに売り上げを最大化できるか。”
製品を明確に差別化する鍵は、ターゲットのニーズを明確に理解する点にあります。多くの場合、異なる価格・性能の製品を様々な顧客に向けて販売します。しかし、それらの製品の使用用途があまり変わらない事も多々あります。そのため、我々は、お客様に顧客要求の理解に時間をかける事を強くお勧めします。あなたの顧客は、「簡単に取り付けられる」と、「長寿命」のどちらを望んでいるでしょうか。
顧客要求における相違点と類似点を理解する事 が、プラットフォーム・ベース製品を管理する上で非常に重要です。そして、製品間で共通化できる領域を明確化します。一方、顧客にとって重要な要求と、それを満たす仕様は異なるように設定する事で、カニバリズムを避ける必要があります。
カスタマーキャンバスを用いると、顧客要求の違いを分析しやすくなります
結論です。差別化を実現する第一歩は、 顧客要求における相違点と類似点を注意深く理解する事です。加えて、差別化のための価格設定や、製品ロードマップの管理も重要ですが、これらは今後の記事にて考えてみます。
“製品のどの仕様が他と違うかといった点を、いかにエンジニアに情報を提供すべきか。”
製品間の仕様の違いが明確になっている場合、次のステップは仕様を設計やコードへの落とし込みです。製品間での共通点や相違点をエンジニアに明確に伝える製品仕様一覧表が必要です。しかし、その前に、エンジニアは製品を設計する上で必要な製品仕様を理解する必要があります。これは、当り前の事のようですが、意外に難しい事です。時折、製品仕様が細かすぎる場合や、最適でない技術的解決策を指定する場合もありますが、これはエンジニアを制約、混乱させるだけです。また、仕様が正確でない場合や、製品設計に関係のない情報が書かれてある場合も有ります。だからこそ、膝詰めで製品仕様一覧表の作成・レビューをお勧め致します。もう一つのお勧めは、製品要件(速度や、最大幅など)と仕様の構造を構築する事です。この時、エンジニアの領域である機能や、技術的解決策と隔離をしておく必要があります。
製品要件を製品特性で表現した例。製品特性は、顧客への提供するメリットの尺度と定義できます。各製品特性は目標仕様値を包含します。
成功している製品管理部門では、エンジニアチームが密にコラボレーションし、成員要件を構造化し、製品群全体に対して共通認識がとれるようにしています。弊社では、製品特性と目標仕様値を用いて製品要件を構造化しています。製品特性と目標仕様値を用いると、製品間の仕様上の相違点と共通点、及びどの機能がどのように進化するのか、エンジニアに効率的に伝える事ができます。
“製品ラインナップから得られる利益をどの様に計算し、コントロールして、最適化するのか。”
プラットフォーム方式で成功裏に製品開発ができた場合、技術的解決策や、原則、部品、生産ライン、治具等を共通化できます。この方式はゲームチェンジャーです。なぜなら、この方式では、開発や生産における間接費を削減するからです。しかし、このメリットを最大化させるには、私たちはプラットフォーム上の利益やコストの計算・コントロール方式を変革する必要があります。利益を最大化するには、単一製品のコストを管理(部分最適)するのでなく、プラットフォーム上すべての製品での全体最適化が必要なのです。
全体最適への移行は、最初は怖気づくかもしれません。しかし、次の事を行う必要があります。
- 間接費を増加させる項目(固有部品や、生産ライン、治具等)の導入や管理にかかるコストを計算し、プラットフォーム上のモジュールやサブアッシ―に紐づける。
- プラットフォームで用いるモジュールやサブアッシ―の直材費を計算する。加えて、各製品で構成するモジュールやサブアッシ―を規定する。
- 製品の平均売価や販売量を試算する。
製品ポートフォリオの収益性管理概要の例では、製品の開発・生産時の複雑さにかかるコストを考慮している。
上記3ステップを踏まえると、製品群全体に亘る収益情報がシンプルな形で得られます。また、データの構築次第では、製品やサブアッシ―の導入や廃番に伴う収益を分析できます。ここまで見てきた様に製品群全体レベルで利益とコストの管理をすると、個別製品レベルで管理するよりも、最適な意思決定が可能になります。つまり、プラットフォーム・ベース製品から得られる利益の最大化されるのです。
要約: 適切に構造化されリンクされた製品アーキテクチャデータが、製品構成を成功させる鍵である
冒頭で述べた通り、プラットフォーム・ベース製品を管理するには、製品や部品等のレベルで見る必要があります。決して平たんな道のりではありません。私たちは、以下が最も効率的な方法であると信じています。1) 製品要件が、相違点と共通点を明示する事、2) 複雑性のコストを考慮しながら、製品群全体でコストと利益を管理する事、3) 製品管理とエンジニアが密なスクラムを組む事
詳しく知りたいですか?
本稿で気になる点、詳しく知りたい点がございましたら、ぜひご連絡ください。貴社の製品ポートフォリオをいかに最適化するか、お話しできれば幸いです。貴社の製品ポートフォリオの利益最大化へ、一緒に歩み出しましょう。