Esdscha Trailer Systemsの場合

製品アーキテクチャの力
製品アーキテクチャの整理による事業改善

 

 

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Edscha Trailer Systemsのチームは、製品のバリエーション数を増加させながら、更に部品の種類数を削減するため、スライディングルーフの構造を見直すことにしました。彼らは、ヒンジ、ローラー、レールを構成するモジュールとインターフェースを最適化しました。

では、結果はどうだったのでしょうか。

従来、108もの部品種類数があったところを、32のモジュールバリアント(部品種類数)に削減し、それらを繋げるインターフェースも標準化されました。

 

 

 

"モジュラー化の実現は、私たちの戦略の中でとても重要なものです。モジュラーマネジメント社が提供する能力とノウハウは、研究開発と製造の分野で大きな変更を行う際に、素晴らしいサポートを行ってくれました。"

Anders Birgersson
Edscha Trailer Systems

 

 


 

会社概要

VBG(現在はEdscha Trailer Systemsの一部)は、交通安全の発展に人並外れた情熱を注いだエンジニアのHerman Kreftingによって1951年に設立されました。彼は、大型トラックへのトレーラーの取り付けを大幅に改善する新しいトラックカップリングを設計し、特許を取得しました。カップリング製造ビジネスは、1950年代に急速に成長し、新たな製品を生み出し、ヨーロッパ全土に営業所を設けるに至りました。

現在、VBG Groupは、大型車両業界向けにさまざまなコンポーネントの開発と製造を行っています。 年間売り上げは3億7500万ドルに上り、4つの部門から構成されています。EM車両メーカーまたはトラック専門のボディビルダーに卸し、アフターサービス用には、専門の小売店舗も持っています。

VBGトラック機器部門は、トラックや大型トレーラー用のカップリング機器のリーディングサプライヤです。VBGとRingfederブランドのカップリング装置の市場シェアは50%以上に達しています。顧客は、トラックやトレーラーのメーカーや、メーカーから購入したシャシーから特殊車両を組み立てるアフターマーケットのボディビルダーです。

Edscha Trailer Systems部門は、トラックおよびトレーラー用の可動式エンクロージャーの大手サプライヤです。Edscha Trailer SystemsおよびSesamブランドのスライディングルーフの市場シェアは50%弱です。 顧客には、ヨーロッパのトレーラーメーカー、Krone、Wielton,、Tirsan、 Kässbohrer、Fruehauf und Bergerに加え、トラックボディービルダーやアフターマーケット用の小売業者が含まれます。

Ringfeder Power Transmission部門は、建設、機械、電力、鉱業など、幅広い業界に向けた、機械式動力伝達、エネルギーおよび衝撃吸収装置における世界的なマーケットリーダーです。

Mobile Climate Control部門は、バス、オフロード、ユーティリティ、防衛車両向けの温度制御システムの市場で活躍しています。 この部門は、小型から中型サイズのシリーズでカスタマイズに力を入れており、 暖房、換気、空調、制御、及びそれらに幅広いコンポーネントを含むソリューションを提供しています。

 

 

 

事業内容

1980年代までは、トレーラー用カップリングのコア製品を一つのブランド名のもと改良し、提供することに重きを置いていましたが、その後オリジナルのカップリングに加え、高品質なセミトレーラー用の5輪アタッチメントや自動車用の牽引棒などを開発していきました。その結果、売り上げは年々順調に伸び、北欧では新たな営業所や先進的な製造設備を導入して事業を拡大していきました。

1990年代に、VBGは事業ポートフォリオに製品やブランドを追加するために他の小規模な企業を買収し始めました。 彼らは補完的な製品と新製品を増やして新たな市場を狙いました。 補完的な製品は既存の製品と適合するため、ビジネス全体の相乗効果と最終的なコスト削減に貢献しました。

成長と買収により、VBGは受注量の変動が大きく、比較的小さな市場に、多種多様な製品を提供する状況になっていました。 多種多様な製品の品揃えによりコストとリードタイムは増加していきましたが、単価は中々上げられませんでした。 牽引棒カップリングの製造は、顧客の状況に大きく依存していました。

受注の変動をカバーするために、リソースプランの見直しや、時間外作業、臨時要員の雇用や大量の在庫を持たざるを得ませんでした。VBGは、顧客が要求する製品機能を提供することで競合他社に追いつくのに苦労していました。

1993年に、VBGはモジュラーマネジメント社との契約を開始しました。 トラックカプラーの最初のモジュラー化プロジェクトが完了しました。固有部品点数と製品数を42%削減でき、総コストも削減できました。 一連のモジュラー化プロジェクトにより、純利益も改善されました。 リードタイムも大幅に短縮され、北欧の顧客へは製品を24時間以内に提供できるようになりました。

1997年に、VBGはトレーラーカップリングの競争相手であるRingfederを買収し、動力伝達用の機械要素も提供しました。 以前開発したモジュラー製品アーキテクチャを活用することにより、VBGはRingfederカプラーをVBG製品ファミリーにすばやく統合しました。単一の製品プラットフォームに統合することで、効率化が図られました。

 

 

 

Edscha Trailer Systems

2005年、同社はトラックおよびトレーラー向けのEdscha Trailer SystemsおよびSesamスライディングルーフシステムを買収し、製品の多様化を進めました。 同社は、トラックおよびトレーラー用のスライディングルーフシステムの創始者です。同製品は、トラック上部または側面からの貨物の積み込みを容易にできるといった製品の特長を持っています。 Sesamには、低価格帯で性能の劣る、同じタイプの製品が含まれていました。

2009年、リーマンショックによる世界経済の冷え込みによってトラック市場の全体的な需要は減少しました。Edscha Trailer SystemsとSesamは、OEMがトラックやトレーラーの在庫を移動することが出来なかったことにより、VBG事業ポートフォリオの中で最も大きな打撃を受けました。その結果、スライディングルーフシステムの設置台数が大幅に減少しました。需要の減少により、生産量に依存する製造コストは増加しました。最近のVBGの買収以来、スライディングルーフシステムのモジュラー製品アーキテクチャの効果をまだ実感できていませんでした。一方、モジュラープラットフォームの実装で過去成功していたという経験から、このモジュラー化のアプローチは、この部門が抱えるコストの課題のためのソリューションであると信じていました。

ここからは、Edscha Trailer Systemsのモジュラー化への道のりを紹介します。

 

 

Edscha

 

Typical Trailer Sliding Roof System offered by Edscha

 

 

製品のマーケティングと管理

Edscha Trailer Systemsの場合、自社のトレーラーシステム製品を競合他社製品と差別化することが年々難しくなってきました。市場が保守的で、イノベーションのためには顧客価値を大きく変革しなければならず、その変革に顧客が対応するには長い時間を要しました。

Edscha Trailer Systemsのマーケティングチームは、モデル年度ごと独自の製品を発表しました。彼らは、標準製品に載せる機能やオプションを定める一方、要望に応じて個別で機能を開発をしていました。チームはまた、Edscha Trailer SystemsとSesamという2つのブランドを取り扱っているため、必然的に性能が重複する製品を提供していました。

 

製品設計とエンジニアリング

スライディングルーフは成熟した製品ラインであるということもあり、これまで何年にもわたって製品にはわずかな変化しかありませんでした。また、エンジニアリングチームは小規模だったため、大規模な製品開発プロジェクトは経験したことがありませんでした。年に一度の製品変更で必要とされたのは、小さな設計変更だけで、チームはその年の残りの時間を顧客からの要望に応えるために費やしていました。また、品質問題の解決にも多くの時間を費やしていました。

 

製造オペレーション

チェコ共和国のEdscha Trailer Systems工場では、スライディングルーフのコンポーネントを購入した製品の一部を切り取り、リベットで留め、組み立てます。

その他のコンポーネントは、OEMまたは小売業者に直接配送され、車両で組み立てられていました。ほとんどのコンポーネントは、140社のサプライヤから同社専用に調達されています。2011年には、約3万から3万5千枚のスライディングルーフシステムを生産しました。

 

 

 

"モジュラー化の実現は、私たちの戦略の中でとても重要なものです。モジュラーマネジメント社が提供する能力とノウハウは、研究開発と製造の分野で大きな変更を行う際に、素晴らしいサポートを行ってくれました。"

Anders Birgersson
Edscha Trailer Systems (formerly VBG)

 

 

 

モジュラーアーキテクチャのゴール

 

Per Ericson氏は、スライディングルーフシステムのモジュール製品アーキテクチャ構築を通して、全体的なコストを大幅に削減し、不況に強いビジネスにしようと努めました。

Per氏は、EdschaとSesamブランドの製品を同じ製品プラットフォームに統合することを検討していました。彼は、1997年にVBGがVBGとRingfederのトレーラーカプラーで同様の事を実施し、多くの利益を実現したことに自信を持っていました。

 

 

 

”私たちは成熟した市場で活動しており、国内および海外のプレーヤーとの厳しい競争にさらされています。モジュラーコンセプトを採用することで、当社の完成度を高め、より効率的に利益を上げることができます。モジュラーマネジメントは、多品種、多固有部品点数な体質を、モジュラー化により小固有部品点数で賄える体質への変革プロセスをサポート、指導してくれました。このプロセスを自分たちだけで進めることはできなかったでしょう。モジュラーマネジメント社のサポートと指導のお陰で、プロジェクトを成功させることができました。”

Per Ericsson
Formerly Edscha Trailer Systems, retired 2017

 

 

 

ヒマラヤプロジェクトは2011年1月に開始され、投資は製品発売後4〜5年以内に回収される見込みでした。同社はまず、基盤(ベース)となる製品アーキテクチャを開発します。その後、リスクを最小化するため、小規模なプロジェクトに製品アーキテクチャを実装します。これにより、市場投入までの期間を短縮できます。プロジェクトのKPIには、次のものが含まれています。

  • コンフィグレーション性を向上させ、顧客のさまざまな要求に対応する
  • 誰もが認める市場リーダーになることにより、競合他社との差をつける
  • ビジネススピードを高め、製品化まで、納品までの時間を短縮する
  • 固有のコンポーネントの数を減らす

売上の増加

Edscha Trailer Systemsは、成長を続ける新規の競合他社に負けることなく、市場シェアを維持することを目指していました。そのためには、付加価値が高く、魅力的な製品群を顧客に提供し、平均リードタイムを大幅に短縮することが必要でした。

 

収益性の改善

市場の低迷は同社にとって厳しいものでした。彼らは、将来にわたってコスト競争力を維持するために、製品コストを大幅に見直す必要がありました。包括的な目標は、固有部品点数を70%削減することでした。これらは、サプライチェーンシステム内で設計および管理する必要がある部品です。部品数を削減することでサプライヤの数を70%削減でき、在庫コストを45%削減できる、そして同様に直接材料費も削減することができると推測していました。

 

 

業績

2013年末までに、Edscha Trailer Systems社は、トレーラースライディングルーフシステムのモジュラー化への取り組みの効果をすでに実感していました。製品はまだ正式には発売されていませんでしたが、これまでに行ってきた決断と効率改善の効果を実感してきました。下位互換性により、新しいコンポーネントが古いシステムでも動作するようになりました。

 

 

”Edscha Trailer Systems – 市場の低迷が続く中で収益性を向上 当部門では2013年に向けて、トレーラー事業は好調に推移し、下半期には需要が増加するものと予想していました。しかしながら、その年の市場は年末に向けて改善が見られたものの、全体を通して低迷を続けました。市場が低迷しているため、当部門の売上高の増加率は1%にとどまったにもかかわらず、Edscha Trailer Systemsは収益性改善効果により、営業利益率は9%にまで上昇しました。コスト削減とより効率的なプロセスがこれに貢献し、当部門は2014年に新開発のスライディングルーフの新世代を市場に投入することで、収益性がさらに改善されると予想しています。しかし、主に市場状況の改善による売上高の増加が予想されるため、Edscha Trailer Systemsも期待している成長を遂げることが可能になるでしょう。ヨーロッパ内でのトレーラー在庫の交換需要が今後2,3年の市場を牽引するでしょう。 私は、Edscha Trailer Systemsの新製品や、その市場での強力なポジションが、2014年に確固たる土壌ができる事、つまり、持続的に収益改善をし続ける土壌ができる事を期待しています。”

Anders Birgersson talks about the financial impact in the 2013 Annual Report

 

 

 

従来より少数のサプライヤと交渉することにより、コスト削減が見込めていました。また、全体的なコスト削減は15%と目され、これは、チームとモジュラーマネジメントで出した最初の見積もりに非常に近いものでした。これらの成功を受けて、Edscha Trailer System部門では、もう一つのモジュラー製品の開発に取り掛かることが出来ました。

 

製品マーケティングと管理

新製品群の市場投入は、各顧客と調整し、1年以内に実施する必要があります。

主要顧客に加えて、20社のトラック車体メーカーと130社の最終顧客を対象に市場調査を実施しました。製品の種類を増やす事、リードタイムを短縮することが、市場シェアを維持するための鍵となることを顧客と確認しました。また、製品の信頼性、安全性、素早い開閉能力が、重要な顧客要求であるということに気づきました。

モジュラー製品アーキテクチャの開発を通じて、マーケティングチームと製品エンジニアリングチームは、新しい共同作業方法を開発しました。彼らは、顧客ニーズと、それに対応する技術的解決策(≒アッセンブリ)の関係性を明確化しました。また、重要な顧客価値と、それに関連するモジュールを明確化しました。これによって、モジュール開発のプライオリティが付けられるようになりました。

絶え間なく変化する市場要求に応え続けるため、モジュールバリアントを導入し続けることにしました。

新しいモジュールバリアントの開発時間は次のように設定されました。

  • 新しいモジュールまたは重要なモジュールバリアントの開発12〜18か月(プロトタイプとフィールドテストが必要)
  • 新製品への適合:6か月(プロトタイプ、フィールドテスト無しのモジュールバリアント)
  • お客様要求への適応:1か月(マイナーチェンジ)

Edscha Trailer Systemの設計部門では、長期的なモジュラーの観点に沿って動いています。 チームの生産・調達を見越した設計は卓越しており、コスト削減に貢献しています。 たとえ設計作業が少し複雑になったとしても、運用の効率化を可能にするインターフェースを開発および維持を行っています。

 

製品開発技術

製品の優先順位の明確化により、エンジニアリング及び設計チームは徐々に開発範囲を拡大できるようになりました。リソースと資金が限られていたということもあり、1プログラム内で全範囲のモジュールバリアントを開発することはできませんでした。彼らはまず、長い期間使用されるベースとなるアーキテクチャ開発に着手し、後に、製品間で共通に用いることができるモジュールバリアントを開発しました。そうすることで、新たなモジュールの導入に時間をかけることが出来ます。現に、チームがまだ新しいモジュールバリアントを開発している間に製品を発売することができました。

 

製造オペレーション

サプライヤとの新規取引の必要性等は早期に予測することができるようになりました。また、部品点数削減により、1部品当たりの生産量増加やサプライヤ数や在庫、コストの削減に寄与しました。プロジェクト開始時にサプライヤと立てたコスト削減計画は、チームが予測していた値と非常に近しいモノでした。 結果的に、サプライヤ数は140から40にまで削減することができました。

このようなメリットは、小売業者にも広がっていきました。Edscha Trailer Systemからのリードタイムが短縮されたことによって、多くの業者が以前よりも少ない在庫で回せるようになりました。

 

 

モジュラーアーキテクチャの実践

 

Edscha Trailer Systemsのチームは、既存の製品バリエーションの数を維持し、さらには増やしながら部品の種類数を減らしていくために、スライディングルーフの主要なメカニカルシステムに注目しました。彼らは、ヒンジ、ローラー、レールを構成するインターフェースとモジュールを最適化しました。

以前は108のコンポーネントバリアントを使用していましたが、標準化されたインターフェースによって32のモジュールバリアントにまで削減されました。

 

 

Hinges Reduced

 

39 Hinges Reduced to 4. 23 Rollers Reduced to 5.

 

 

Rails Reduced

 

44 Rails Reduced to 8