Sidel社は熾烈な市場競争と多くの顧客のニーズへの対応によって、製品や設計プロセス等が複雑になるという課題に直面していました。その改善策として、CEOであるMart Tiismann氏はモジュラー製品アーキテクチャプログラムに投資することを決意しました。今回は、その素晴らしい成果をご紹介いたします。
エグゼクティブサマリー
Sidel社は、液体充填用のPETボトルソリューションの世界的なリーディングプロバイダーです。 同社は、飲料、食品、家庭、パーソナルケア業界向けのブロー成型、充填、ラベル付け、搬送などを一括で扱うエンジニアリングソリューションの市場リーダーです。
2010年、Sidel社は多様化した品揃えに加え、個別要求に基づく開発に伴うコストの増加に苦労していました。同社はPETボトル製造ライン全体を用いたソリューションと、ラインの一部を用いたソリューションを提供していますが、ラインソリューションの多様化と、これで間に合わない個別開発が課題となる事は想定の範疇でした。その背景には、あらゆるカスタマイズ要求に「YES」と受け入れてしまう営業文化があります。一方で業界はよりコンフィグレーションが容易なソリューションを必要としていました。
営業が何でも「YES」と言ってしまうため、設計と製造・調達は製品の提供に苦労し、競争は激化していました。特に最も収益性の高い顧客層、地域、ソリューションに競合他社が食い込んできたため、利益は圧迫されつつありました。
この様な状況下でMart Tiismann氏は、モジュラー製品アーキテクチャプログラムへの投資を決意しました。
その成果は素晴らしいものでした。
- CTO(受注組合せ生産)による売上比率が33%から60%まで増加
- 部品種類数40%削減
- 新規設計部品数50%減少
- 10%のコスト削減
- 提供できる製品ラインアップの種類数300%増加
- 総経費30%削減
- 注文から納品までのリードタイム(製造リードタイム)50%短縮
- 新規ソリューション開発期間(開発リードタイム)30%短縮
- ETO(受注開発生産)にかかる時間80%削減
事例紹介
Sidel社は2010年現在、5,300人の従業員を抱え、14億ユーロ(約1800億円)の売上高を持つ企業でした。 同社は26ある工場の多くを、液体の充填、ブロー成型、キャッピング、ラベリング、搬送ソリューションなど、ETO(受注開発生産)に対応させていました。
Sidel社の製品ポートフォリオには、ライン全体を用いたソリューションと、ラインの一部を用いたソリューション(ブロー成形機、充填機、コンベヤー、ラベラー、低温殺菌機、パレタイザー、デパレタイザー、ロボット機器、最終工程(EOL)、サービス、スペアパーツ)の両方のサービスがありました。
Sidel社は高度に集約された先進的な製造システムを持っています。なぜなら彼らは高価な材料や大きくて高価なスペアパーツを用いて、高速でかつ高精度な製造を行う必要があるからです。
2010年頃には、顧客毎のカスタマイズが高度化したため、生産においても多くのカスタマイズが必要となる結果となりました。 事実として3機種ごとに新しい機能やデザインを提供する必要がありました。
変革へのチャレンジ
TreacyとWiersemaは、著書「The Discipline of Market Leaders」において企業の競争力を次の3つの軸で表されると定義しています。即ち、Operational Excellence(業務卓越性)、Customer Intimacy、(顧客親密性)およびProduct Leadership(製品リーダーシップ)の三象限です。Mart Tiismann 氏はModular ManagementのAlex von YxkullとAlex Ginsburgのガイドによって、ここに企業の変革のモデルがあると着目をしました。 Sidel社のモジュラー化プログラムの課題・目標は、これら3軸に基づいて整理され、Sidelの課題やモジュラー化プログラムを開始する理由が明確になりました。
各軸毎の課題は以下のように示されました。
Product Leadership(製品リーダーシップ)
- 市場でのリーダーシップを取り戻すには、よりイノベーションに集中(市場でのリーダーシップを取り戻すには、既存部品の再設計では不十分)
- 相互交流とイノベーションパートナーを活用するため、モジュラー製品アーキテクチャと定義されたインターフェースを整備
- 標準化を進めても、顧客要求をカバーする事は困難。想定外の顧客要求に対応するにはコストがかかる
Operational Excellence(業務卓越性)
- 部品種類数やサプライヤ数が過多だと体系的な改善活動が推進しにくくなる
- 設計におけるルール等が統一されていないと、グローバルなサプライチェーン構築が困難になる
- 複雑さによるコストが想定できない
Customer Intimacy(顧客親密性)
- 製品そのものの標準化は、市場に受け入れられない
- ETO(受注開発生産)は時間もコストもかさみ過ぎる
- 次のステップは明確な目標を設定することでした。
モジュラーアーキテクチャの目標
アーキテクチャ開発プログラムの目標も、先ほどの課題分析で使用した3軸として設定されました。
Product Leadership(製品リーダーシップ)
- 先進テクノロジー分野におけるリーダーシップの確立
- 市場投入までの時間を短縮
- 業務効率化。それに伴う開発リードタイムの改善と総経費の改善
Operational Excellence(業務卓越性)
- 生産リードタイムを短縮
- 部品種類数を削減する事で複雑さコスト削減
- 異なる場所での設計、調達、および組立を実現
- 再利用性を高め、顧客固有のエンジニアリングを低減
- 品質向上
Customer Intimacy(顧客親密性)
- 製品の提供幅を拡大
- ますます多様化する顧客の要求に応える
- 顧客ごとのサービスの開発
図1:液体充填ライン
プログラムの対象範囲
モジュラー化プログラムはフィラー、ブロワー、コンベヤー、ラベラーを対象に行われ、以下の点が重要視されました。
- 市場の声に即したバリエーション・開発
- ライン全体がコンフィグレーション可能で、他と調和し、パフォーマンスも良い事
- 各装置内でモジュラー化され、ライン全体とのインターフェースが守られている事
- 制御システムへの留意(ライン全体及び、各装置)
- モジュラー製品を維持し続けるためのプロセスおよび情報管理
- CTO(受注組立生産)を可能にするための業務プロセスとインフォメーションシステム管理
成果
製品コンフィグレーション
Sidel社は、モジュラー製品アーキテクチャにより、より優れた、かつ、より広範囲に及ぶ製品ラインナップを実現する事が出来ました。
製品面における成果は主に以下の通りです。
- ブロワー製品の種類数を3倍にするなど、より多くのソリューションを提供
- インターフェースの標準化により、より多くの製品オプションが利用可能に
- ライン全体とサブシステム間では共通の仕様項目を使用
- 3つのコンベアレンジを1つのアーキテクチャに統合。これによって業務効率化と構成可能性が向上し、新規部品点数30%削減
図2:改善前のコンベア種類例 (製造される製品ごとに個別設計されていた)
図3:モジュラー化後のコンベア種類例 (すべてが共通の製品アーキテクチャを使用)
ビジネス面における成果
ビジネス面における成果はさらに素晴らしいものでした。
- CTO(受注組合せ生産)による売上比率が33%から60%まで増加
- 部品種類数40%削減
- 新規設計部品数50%減少
- 10%のコスト削減
- 提供できる製品ラインアップの種類数300%増加
- 総経費30%削減
- 注文から納品までのリードタイム(製造リードタイム)50%短縮
- 新規ソリューション開発期間(開発リードタイム)30%短縮
- ETO(受注開発生産)にかかる時間80%削減
Sidel Group 前CEO Mart Tiismann氏より;
"私はSidelのCEOとして、製品、顧客、組織をつなぐことでビジネスを変革できるという事を学びました。
モジュラー製品アーキテクチャと情報管理ツールがその変革を実現に導いてくれたのです。"