事例紹介

ワープールの
製品アーキテクチャ

ワープールの場合

製品アーキテクチャが戦略と結果を結びつける

Steve Paddock ワープール元製品開発担当副社長

会社概要 

ワープール・コーポレーションは様々な白物家電を取り扱う世界のリーディングメーカーであり、年間売上190億米ドル以上、従業員数6万8千人を抱え、世界中に65ものR&Dセンターを持っています。 ワープールは電化製品産業のリーダーですが、スウェーデンのエレクトロラックス、アメリカのGE Consumer & Industrial、韓国のLG エレクトロニクスなどの競合が存在しています。 提供製品ラインアップとしてはランドリールームにある洗濯機や乾燥機をはじめ、各部屋で用いるエアコンや浄水器、オーブン、食器洗浄機、電子レンジなどのキッチン製品まで多岐にわたります。 

ワープールが販売する電子レンジは、明確な戦略に基づいた多くのブランドを市場に展開しています。

しかし明確な戦略があるにもかかわらず、スウェーデンで開発・製造される同社のハイエンド電子レンジは低収益性、製品ラインアップの少なさ、エンドユーザーの自由度の低さ、容赦ない価格競争、製品モデルの短寿命、ブランド差別化の限界など様々な重要課題を抱えていました。これらの重要課題を解決しながら、新規市場開拓を可能にし、中国への生産拠点の移管をすることなく解決する手法として同社はモジュラー化支援プログラムをモジュラーマネジメント社に依頼しました。 その結果、製品ラインアップは大幅に増加し、小規模なバッチ生産で迅速なモデルチェンジを低コストで実現されました。 

この電子レンジ製品の成功を皮切りに、同社はレンジ台上面、オーブン、食器洗い機、冷蔵庫、冷凍庫、洗濯機、乾燥機など20を超える製品ブランドのモジュラー化プログラムを実施しました。 

そしてブランド戦略による製品付加価値とマーケットシェア向上を牽引すると共に、コスト削減による大きな成果を達成しました。

  • 固有部品種類数を35%削減
  • 製品毎に保有部品を25%削減
  • 部品コストを20%削減
  • プラットフォームを40%削減
  • 直接材料費を10%削減

明快な因果関係の説明は困難ではありますが、コスト削減成果をも大きく上回るブランド価値向上など、定量化可能な市場への影響は顕著であると言えます。

 

詳細

このケースでは、スウェーデンのノルチェピングで2002年に設計・製造されたオーブンレンジ(MWOs)に焦点を当てています。 主要な事業はカウンタートップ式のオーブンレンジで、当時の特徴は以下の4つにまとめられます。

  • グローバルで大量生産が可能な製品 
  • ゼロまたはごく僅かなコンフィグレーションの、高度に標準化されたSKU
  • 直接的な低コスト競争のため、コスト感応度が極端に高い
  • モデルの寿命はわずか1,2年

ノルチェピングではコスト削減の試みが尽き、大量生産においては中国への生産移管だけが、グローバル市場における同社の競争力を保つための唯一残された選択肢と思われました。しかし、チームが探していた答えは違いました。同社は、スウェーデンの工場で製造を続けるためにはどうしたらいいのかという答えを探していました。 そして幅広い顧客を満足させ、かつ新しい技術とトレンドにすばやく対応できる、より多様でハイエンドな電子レンジを生産するという新たなビジネスアプローチで、これまでとは違う市場に焦点を当てることを決めました。

この目標を首尾よく達成するには、チームが多くの事業課題を乗り越える必要がありました。 中でも同社は生産を改良し、オーバーヘッドを減らし、迅速で市場に焦点を当てた製品開発組織へと変化する必要がありました。 

多種多様なブランドやモデルを効率的に開発・生産する方法を必要としていたノルチェピングの工場にとって、モジュラー製品アーキテクチャは、広いブランド幅や単一の効率的なプラットフォームのSKUを可能にするという明確な答えとなりました。 モジュラーマネジメント社はこのモジュラー戦略に助力しました。 このプロセスを通して、チームはモジュラー製品アーキテクチャを作成し、実行することで達成される、主要な課題やプログラム目標を特定しました。 そして以下のような事業目標を満たすために、Operaと名付けられたプログラムが実行されました。 

 

事業目標

以前の状態 (2002)  

モジュラーアーキテクチャ (2004+)  

市場戦略

チャネル要求に対応する製品  

最終顧客に対応する製品 

製品

ラインナップ

バリエーションが少なく、ブランドも殆ど無い 

バリエーションが10以上の複数のブランド  

全工場

アウトプット 

年間100万ユニット 

年間生産量を60%削減  

製造戦略

大量生産 

小規模生産 

在庫
戦略

完成品が在庫へ 

受注生産 

全年間コスト 

17000万米ドル 

アウトプットに比例して減少する 

平均ユニットコスト 

大量生産で最適化 

3%増に制限 

間接費比 

コストの20% 

より低い総コスト比率を維持する

事業目標に示される課題に加えて、組み込みオーブンレンジにはいくつかの新しい設計課題がありました。 中でも一番の課題は冷却でした。 カウンタートップ式のオーブンレンジは全方位から自由な空気の供給がありますが、組み込み式ではファンによる空気の循環が必要です。 

以前、従来のカウンタートップ式のオーブンレンジは、マイクロ波を利用しており、場合によっては、追加のグリルヒーターも使用していました。新たな組み込み式のオーブンレンジプラットフォームは、強制対流モードとクリスプモードという2種類の新しいクッキングモードを搭載する設計がなされました。また、チームはハイエンド電化製品市場の素早い要求の変化に対処するため、明確なブランド差別化や顧客多様性、計画された開発パスを提供するアプローチを開発する必要がありました 

柔軟な制御パネル

Operaプロジェクトは製品の外観、感触、操作面で幅広い種類のスタイルを組み込むという非常に明確な目標がありました。 そしてプラットフォームは、可能な限り少ない制約で、この幅広いバリエーション効率的に適合する必要がありました伝統的なオーブンレンジでは、ノブやボタンがプリント基板(PCB)の規定の位置に直接配置されています。初期設計でノブの場所が予期せぬ場所になった場合、完全に新しいプリント基板を作らなければなりませんでした。加えて、独自の各形状は一連の特定の穴がある独自のパネルが必要でした。 

これらのパネルごとに独自のツールが必要でした。 そのため、伝統的な設計は以下が要因で非常に自由度が制限されている状態でした。 

  • ノブ/ディスプレイの形状ごとに独自のパネルが必要である
  • ノブやボタン、ディスプレイは既定の位置にのみ配置可能で、場所を変更する場合は、新たなプリント基板を作製する必要がある

モジュラー製品アーキテクチャによって、この問題に様々なアプローチが可能になりました。第1に、パネルの表面は事前に定義されており、ノブを任意の場所に配置することができました。 これらの穴を作るにはツールは必要ありませんでしたが、滑らかなエッジを作り出すためにレーザーでドリル加工を施しました。 第2に、ボタンとノブをプリント基板に直接配置し、全てのボタン、ディスプレイ、ノブが、標準化されたインターフェース(コネクタ付きのケーブル)を介してプリント基板と通信できるようにしました。 そして全ての機械式ノブは、電子式ノブに置き換えました。 これにより寿命が向上し、既知の製品問題が解決されました。 さらに購買量が増加したため電子式ノブの価格は下がり、古い機械式ノブの価格に近づきました。

結果として、Operaチームは様々なスタイルのパネルを設計することが可能になりました。

モジュラーマネジメント社がいなければこの結果は得られなかったのは明らかです。 Operaのプラットフォーム所有者のMäkilä氏は述べています 。さらに、我々が開発時間を丸1年短縮して最初のOpera製品を予定よりも早く発売できたと確信しています。 モジュラー機能展開を用いることでOpera製品は並列エンジニアリングが可能な36個のモジュールに分割することが出来ました。述べています。

Operaチームは各モジュールの仕様を作成しました。 これらのモジュールの仕様は、モジュールやモジュールバリアントについての重要なデータを含んでいます。 モジュラーマネジメント社のキーコンサルタントは誰も自分の組立ラインを離れたり、インターフェースを壊したりしないように、毎週全設計エンジニアとともに品質保証会議を開きました 事実、彼の仕事はプロジェクトにおいて非常に重要なものだったのです。

プロジェクトの実際の間接費の削減は20%でした 今日のOperaはオーブンプラットフォームの「Minerva」と統合されており、これによりノルチェピング側は、ブランドと市場の識別とチャネルを所有するイタリアのメインオーブン側からのエンジニアリング変更要求に迅速に対応することができます。 

モジュラー化の考え方によって、かつてのものよりもはるかに迅速に変更要求に対する影響を予測することが可能になりました。 これにより、時間とエネルギーを節約できます。 旧来のモジュラーではない設計では、スタイリングや性能の変更を要求されると、全体の設計を見直す必要がありました。 現在では、どのモジュールに影響があるのか簡単に判断でき、以前よりも遥かに迅速に対応することができます。Mäkilä氏は述べています。 初期のコンフィグレータはモジュール間の不要な結合が存在する場所を示し、これは可能な限り設計を分断するのに役立ちます。

また、Mäkilä氏はこうも述べています。モジュール化のお陰でチームは以前よりも効率的に図面や部品表を作成することができるようになりました。

Mäkilä

ワープールが販売する電子レンジは明確な戦略に基づいた多くのブランドを市場に展開しています。

しかし明確な戦略があるにもかかわらず、スウェーデンで開発・製造される同社のハイエンド電子レンジは低収益性、製品ラインアップの少なさ、エンドユーザーの自由度の低さ、容赦ない価格競争、製品モデルの短寿命、ブランド差別化の限界など様々な重要課題を抱えていました。これらの重要課題を解決しながら、新規市場開拓を可能にし、中国への生産拠点の移管をすることなく解決する手法として、同社はモジュラー化支援プログラムをモジュラーマネジメント社に依頼しました。 その結果、製品ラインアップは大幅に増加し、小規模なバッチ生産で迅速なモデルチェンジを低コストで実現することが出来ました。 

この電子レンジ製品の成功を皮切りに、同社はレンジ台上面、オーブン、食器洗い機、冷蔵庫、冷凍庫、洗濯機、乾燥機など20を超える製品ブランドのモジュラー化プログラムを実施しました。 

そしてブランド戦略による製品付加価値とマーケットシェア向上を牽引すると共に、コスト削減による大きな成果を達成しました。

  • 固有部品種類数を35%削減
  • 製品毎に保有部品を25%削減
  • 部品コストを20%削減
  • プラットフォームを40%削減
  • 直接材料費を10%削減

明快な因果関係の説明は困難ではありますが、コスト削減成果をも大きく上回るブランド価値向上など、定量化可能な市場への影響は顕著であると言えます。